※非常に重要 継ぎ竿の緩み

(解説 開発 小西)

継ぎのあるロッドは、キャスティングやアクションで必ず緩みが発生します。緩みがある状態で使うと、キャスティングや魚とのファイトで高確率でロッドを破損させるか、これが原因で後に破損を誘発させます。大切な愛竿を破損を起こさせない為に、ご使用中は、継ぎが緩んでいないかの点検を行ってください。





●『破損のパターン』 と 『なぜ割れるのか』

私も、昔に釣り場で1度と2010年位にルアーのバランス取りをしていて1度、ジョイントが緩んでいる状態でのキャスティングで愛竿を破損しております。私の場合、疲れて集中力を欠いた時と集中し過ぎてジョイントの緩みに気が行っていない時に起こしてしまいました。とても大切にしていた愛竿だったので、非常に後悔しました。私もやったことがあるので、偉そうなことは言えませんが、『破損のパターン』 と 『なぜ割れるのか』 を下記に記載しました。

ジョイントが緩んでいると、キャスティングした時と魚とのファイトの時にハンドルパイプが割れます。この時、ハンドルパイプのカーボンが割れる音がします。

ダメージが小さい場合は、破損時の音が小さいです。ピシッと聞こえるか、聞こえないかの音です。しかし、ダメージが大きい場合の破損は何が起こったのかと思うくらい、物凄い大きな音がして割れます。この時、ロッドの本体が飛んでいくか海に落ちることが多いです。

折れる理由ですが、ハンドルパイプ内でテコが働くからです。本体側ジョイントがハンドルパイプにしっかり入っていないと、ハンドルパイプ内で遊び(隙間が開く)が起こります。ロッド本体側ジョイントが棒になり、ハンドルパイプの穴をこじる形になり、棒が穴を潰す状態になります。これが割れの原因です。

稀に逆のケースもあり、こじった棒の方が折れる(ロッド本体側) が折れることもあります。魚とのファイトの時にもジョイントが緩んでいると、ハンドルパイプ内でテコが働き、同様に破損します。



●原因があり、後に破損するパターン

破損時に音がすることを先ほど話しましたが、小さな音の場合は、ピシッと聞こえるか、聞こえないかの音です。この時に既にハンドルパイプが小さく割れているのですが、気が付いていない場合が多いと思います。

この後、キャスティングやファイトで負荷を受けると、小さなひび割れが一気に拡大して大きなひび割れに変わり、あたかもその時に割れたかのように思うことがあります。しかし、これは以前に割れていた、ひびの拡大でこの時に気が付くことになったのです。

過去に、同船者の方がキャスティングされたと同時にロッド本体が抜けて飛んでいったことがありました。その瞬間に ピシッとかすかな音がしたので、ジョイント部をチェックさせて貰うと、小さなひびが入っていました。気が付かずに、このまま使用すれば、次にある程度の負荷が掛かった時に破損していた事例です。



●キャスティングでロッド本体が抜けた竿は要注意

キャスティングでロッド本体が抜けた竿は、既にハンドルパイプにひびが入っている可能性があります。もし、キャスティングでロッド本体がハンドルから抜けて飛んでいった場合 ”ハンドルパイプにひびがないか” の点検を行ってください。小さなひびの場合、カーボン繊維の柄などが邪魔して、確認が難しい場合や肉眼ではよく見えないこともあります。破損状況が、よく分からない時は、カーペンターまでご相談ください。



●大切なことは、破損の原因を作らないこと

私の経験やハンドルパイプの破損品のカーボンの成型の検査結果から考えると、ハンドルパイプの割れの原因は、ほぼ、ジョイント部の緩みが原因です。継ぎ竿は、必ず使用していると緩んできます。これは、継ぎ竿の宿命です。大切なことは破損の原因を作らないことです。ジョイントが緩んでいないか、使用中の点検が大切だと考えます。

一番気をつけないといけないのが、気温の変化で、驚くべき速さでジョイントが緩む時があります。挿した時の気温が高く、その後、気温が下がった場合が非常に早く緩むので危険です。(例えば、車で熱せられていたロッドを挿して、海に出てしぶきがロッドにかかって急激に冷やされた場合など)ジョイント部分をつい先ほど点検したので大丈夫と思わずに、気温の変化などを感じ取り、点検をすることも大切だと思います。

また、ロッドのジョイントは個体差があります。センタレスグラインダーで100分台の精度で加工されています。しかし、やや緩かったり、ややきつかったりと個体差があります。自分のロッドの性質を理解して、その性質に対応してやることを私は心掛けています。

点検の頻度ですが、私は愛竿や大切な試作ロッドを潰さない為に、かなり頻繁にジョイントの緩みのチェックをしています。



■ロッドジョイント部の挿し込みについて



●カーペンターのロッドは、ほぼ ”テーパー合わせ”

カーペンターロッドは、BLC83/35 SC の3ピースを除いてすべて ”テーパー合わせ” になっています。“テーパー合わせ”の継ぎ構造は、ガラス製の醤油注しと、フタの関係に構造が似ています。ガラス製の醤油注しにフタをする時を思い浮かべていただきたいのですが、醤油のフタを真っ直ぐに差し込んだだけではすぐに緩んでしまい、フタだけを持ち上げたときに フタが外れて醤油注しのビンがひっくり返ってしまった・・・というご経験はないでしょうか。

この場合、フタの緩みを解消する際に 若干ヒネリを加えながらフタをするのと同様に ロッド本体をグリップに差し込んでいただく際、最後に若干ヒネリを加えていただくと 結合部の内部に均等に圧がかかり、緩みにくくなります。

どれくらいの加減でジョイントを挿すのか?文章や口頭でジョイントの挿し加減の説明は非常に難しいのです。文章や口頭では、解釈の相違が起こりそうに思うので、適正に挿されたジョイントを抜き差しして加減を確認することが一番だと思います。カーペンターロッドをお求めになられたカーペンター取扱店の知識のある店員さんに聞いて下さい。若しくは、製品開発 小西へ製品説明会やイベントの時に聞いて下さい。



●ロッドのジョイントにはクリアランスがあります

ロッドは永く使用しているうちにカーボンが磨耗し、徐々にジョイントの接合部が深くなっていきます。その為、モデルや個体差で多少異なりますが、あらかじめグリップの込み口と本体の化粧巻きとの距離に10mm~20mmのクリアランスを設けております。挿し込み量が足らないと感じ、強く押し込み過ぎないよう、ご注意ください。クリアランスを無視して最後まで挿せば、ハンドルパイプを割るか、まったく抜けなくなります。





■ジョイントを潰された過去の事例

① ジョイント部のクリアランスがあることを理解されておらずに、挿し込み量が足らないと感じ、強く押し込み過ぎてジョイント部が抜けなくなってしまい、万力で挟んで無理に引き抜いた際にロッドを破損した。他の事例で、ジョイントが抜けないので。ロッドのハンドル部からパイプを入れてそのパイプを押し当てて抜こうとして破損した。

② 挿し込み量が足らないと感じ、ロッド本体の継ぎの部分をサンドペーパーでペーパーがけした結果、継ぎのすり合わせがぐらぐらになってしまった

この事例はジョイント部を有する釣竿全てに当てはまります。① ②をされた場合は、一切保証できません。修理は有償修理になります。



■蝋をジョイントへ塗る

ロッドのジョイントの緩みは『度々、確認をすること』が基本となりますが、緩みを緩和する方法がございます。蝋をジョイントへ塗ることで緩みが緩和されます。方法を間違えると逆にロッドの破損を招きます。きちんとした方法で、きちんとした状態に出来ないなら、やらない方が良かったという結果になりますので、やるなら、きちんとした方法で、きちんとした状態になりように行います。

一般的には昔から『フェルールワックス』という物をロッドのジョイントの調整に使います。しかし、『フェルールワックス』は膜厚のコントロールがシビアで難しい為、ロウソクの蝋を使う方がよいです。

※ご注意 BLC83/35 SC 3ピースのロッド本体の継ぎは ”ストレート合わせ” の構造になっています。ストレート合わせには、絶対、蝋やフェルールワックスを塗らないで下さい。入らなくなったり破損したり、抜けなくなる恐れがあります。

●塗り方

先程も述べましたが、きちんとした方法で、きちんとした状態に出来ないとロッドのジョイントを確実に破損します。

①まず、塗る前に、ジョイントをしっかり差し込みます。入った位置に鉛筆、又は極細の油性マジックでマーキングをします。

②ジョイントを抜き、ジョイントのオス側にまんべんなく、薄く蝋を塗ります。表面に蝋のカスが出る状態は塗り過ぎです。
※注意をする点は ”塗り過ぎないこと” です。塗り過ぎは重大な不具合を起こす原因になります。塗り過ぎはジョイントの差し込み不良を起こし、高確率でジョイント折れの原因になります。

③ジョイントを回しながら差込みます。回しながら抜き差ししてお互いを馴染ませます。

④ジョイントの深さを確認します。①でマークを付けた所まで完全に入るかを確認します。
※①で付けたマークの所まで入っていないなら、蝋の塗り過ぎです。その場合、布で蝋を少しこそぎ落としてマークの所まで入るかを再度、確認します。入っていないなら、再び、布で蝋を少しこそぎ落としてマークの所まで入るかを確認します。
※布で蝋を少しこそぎ落としてマークの所まで入らないなら、蠟を塗り過ぎています。その場合、ジョイントのメス側も布で拭き取らないとダメです。

間違った方法をしなければ、デメリットはありませんが、熱で膨張した時に、塗らない状態よりも、ジョイントが抜けにくくなる傾向があります。